一人ではとても立っていられないほど、寂しかったわけではない。
自分の体にぽっかりと空洞があいていたわけでもない。
自分に同情したことなど、ただの一度もない。
夫があり、家庭があり、仕事があり、友達があり、2003年が明けたとき、初詣で手を合わせ、瞬時に浮かんだ言葉は「家内安全、商売繁盛」だったあたし。
だけれども、なぜ「自分は野良だ」と、感じていたのだろう。
なぜ主を求めてやまなかったのだろう。
なぜそれほどまでに「飼われたい」と願ったのだろう。
自分の中に湧いた感情の、正体はわからない。
ただ、その行為の名前は知っていた。
SM・・・と。
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「貴女の、嗜好はなに?どんなプレイを希望しているの?」オープンチャットでよくある会話だ。
あたしは迷いながら「初心者・・というか、未経験なのでわかりません」と言うと「それじゃ、願望はある?」などと聞かれる。
願望・・・それを聞かれたとき、さらに、困る。
「やったことないのはわかったけど、それじゃ、どういうことをされたいと思う?」という質問に、あたしは今でもうまく答えることができない。
根本的に自分のされたいことをしてくれる人を求めていたわけではないんだと思う。
主が望まれたことを「させていただきます」と心から頭を下げられる存在を、言ってみれば「自分よりも強いオス」あるいは「自分を繋ぎ止めてくれる強い鎖のようなもの」を探していたような気がする。
あたしがSM系のチャットで遊ぶようになったのは、2002年の11月頃だった。2ショットチャットの存在すら知らなかった私は、まずその羅列された待機メッセージに目を丸くしてしまった。
なんだか、結婚相談所に行ったときチェックする項目みたいに「アナル拡張」とか「露出調教」とか、書き連ねてあることにビックリしちゃったのだ。
こ、細かい・・・。こんなに細かい条件にあてはまる人を見つけようとしているの・・・?
それって、本当に見つかるものなの?見つかっても・・・その行為に飽きてしまったらどうするの?
なんて、他人の心配をしながら、私は自分の希望するタイプかもしれない人の部屋に飛び込み続けた。(とりあえず、行為の内容については触れていなくて、お話しをしましょう的な待機メッセージのお部屋です)
いろいろな人と、話をしてみた。「わぁ、いい人だなぁ」って感じた人は、たくさんいたと思う。
話しやすい人、誠実な人、面白い人、エッチな(笑)人。
私がモニタのこちら側から、相手が打ち返してくるチャットの言葉をじーーーっと見つめているように、向こうも私のことをじーーーっと見つめているのだろうか。
私はいつ「この人に飼われたい!」とか「この人に縛られたい!」と、思うのだろう。
ただひたすらに、飼われたいと願っていたけれども、その願望が現実にすり替わる瞬間、私はどう感じるのだろう?
主と出会ったのは、1月の土曜日の午後・・・(旧)
SMxSM ONLINElの2ショットチャットをうろついていたときのことだった。
主の待機メッセージを読んで、心惹かれるものがあった。以前にもそのメッセージは目にしたことがあり、お話しをしてみたいと思ったのだけれど、ちょっと目を離した隙にいなくなっていた主。また、出会えたのは幸運、と、あたしは慌てて「入室」をクリックした。
会話は、当たり障りのない部分から始まった。恐ろしいほど丁寧な口調であったのが忘れられない。
なんの話をしたのかなぁ・・・内容はあまり覚えていないなぁ・・・まぁ、その手のチャットにありがちな自己紹介、みたいなことを、話していたんだと思う。
(そういえば、容姿については一切尋ねられなかった。今がどうあれ、飼ったら変えればいいだけの話だから、質問に値する事柄ではないのだろう。が「細身希望」と待機メッセージに一言書いておいてくれれば!と何度思ったことか・・あ、それじゃ出会えなくなっちゃうか・・)
話しているうちに。主からメッセンジャーが利用できますか?と尋ねられた。
使ったことはあるけれど、どうも調子が悪いんです、と答えた。MSNがあわなかったのなら、yahooを試してみたらいかがですか?と即されて、その場でダウンロードした。
持っていなかったのでアカウントも取り、メッセンジャーに繋いだ。2ショットチャットの個室から、主専用となったメッセンジャーに会話の場が移ったのは出会ってから2時間ほどたってからのことだった。
主に一目惚れして、ダウンロード、インストール、アカウントの取得、とその行為を行ったわけではない。ものすごく単純に「もっと話してみたい」と感じただけなのだ。
あたしは主が尋ねられることに一つ一つ答えていただけだったけれど「なんでこんなこと、聞くの?」と、思ったことは一切尋ねられなかったし、まったく友達的な雑談というわけでもなかった。
ミスタイプもなく、タイプも速く、きちんとした日本語を使える、頭の良い人だという印象があった。
それから、メッセンジャーでチャットを続けたとき、個人情報の交換、みたいな場面にさしかかった。フリメのアドレスひとつでも「どうしようかな、教えちゃっても大丈夫なのかな?」と、迷ってしまう相手と話したこともある。
ちょっと耳を澄ませてみた。自分の頭の中に警報は鳴っていなかった。あたしはこの自分の感覚・・直感を、何よりも信じている。思えば、それが全てだ。
なので、その場で問われるがままに、携帯メールのアドレス、携帯の電話番号、自分の顔写真、を差し出し、交換した。今まで体験したことのないスピードで、コトが進んでいるのは、そのことからでも感じられた。
電話してもいいですか?と尋ねられ、はいと答えた。
すぐに電話がかかってきた。・・・何分くらい、話しただろう・・・10分か、15分、そこそこだったと思う。
気が付いたら、あたしは主に飼われていた。
拾われた、というのが正しい言い方なのだろうか。
イメージとしては段ボールの箱に入れられていた子犬(それとも、老犬?)が、気が付いたら主の家に連れてこられた、という感じだ。
関係が成り立つかどうか、それを構築するのにどれほどの時間が必要か、などという疑問も抱かせる暇がないほど、それは主の大きな力に引っ張られていきなり始まった。多分、あたしはこのくらいの力で引いてくれる主に出会いたいと、望んでいたのではないかと、今思う。
会ったこともない人を、知り合ってから数時間も経ってないモニタの向こう側の『名前』を「自分の主である」と、リアルな感覚で、あたしの一番奥の部分に認めさせる人が存在するなんて、思ってもみなかった。
「お前はもう、俺の飼い犬だね?」そう、電話で尋ねられたとき、背筋が震えた。「はい」と、答えた声も、震えていただろうか。
自分の人生が一変する予感がした。
事実、一変した。

(後日談なのだけれども・・主があたしを「飼い犬」と表現してくれたのは、この日のこの言葉で最後になった。次の日、主にあたしの体重を言ったら呼び名が「豚」に変わったからだ。ダイエットを命じられ目標体重に達したら「犬」と呼んであげると主は言った。あたしは頑張って犬の資格を得た。・・・が、そのときは何故だか「奴隷」になっていた。
ああ・・・・あたしは犬になりたかったなぁ・・・・。いや、一度でもいいから、あのとき犬と呼んで欲しかったなぁ・・・・)
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「貴女の、嗜好はなに?どんなプレイを希望しているの?」オープンチャットでよくある会話だ。
あたしは迷いながら「初心者・・というか、未経験なのでわかりません」と言うと「それじゃ、願望はある?」などと聞かれる。
願望・・・それを聞かれたとき、さらに、困る。
「やったことないのはわかったけど、それじゃ、どういうことをされたいと思う?」という質問に、あたしは今でもうまく答えることができない。
根本的に自分のされたいことをしてくれる人を求めていたわけではないんだと思う。
主が望まれたことを「させていただきます」と心から頭を下げられる存在を、言ってみれば「自分よりも強いオス」あるいは「自分を繋ぎ止めてくれる強い鎖のようなもの」を探していたような気がする。
あたしがSM系のチャットで遊ぶようになったのは、2002年の11月頃だった。2ショットチャットの存在すら知らなかった私は、まずその羅列された待機メッセージに目を丸くしてしまった。
なんだか、結婚相談所に行ったときチェックする項目みたいに「アナル拡張」とか「露出調教」とか、書き連ねてあることにビックリしちゃったのだ。
こ、細かい・・・。こんなに細かい条件にあてはまる人を見つけようとしているの・・・?
それって、本当に見つかるものなの?見つかっても・・・その行為に飽きてしまったらどうするの?
なんて、他人の心配をしながら、私は自分の希望するタイプかもしれない人の部屋に飛び込み続けた。(とりあえず、行為の内容については触れていなくて、お話しをしましょう的な待機メッセージのお部屋です)
いろいろな人と、話をしてみた。「わぁ、いい人だなぁ」って感じた人は、たくさんいたと思う。
話しやすい人、誠実な人、面白い人、エッチな(笑)人。
私がモニタのこちら側から、相手が打ち返してくるチャットの言葉をじーーーっと見つめているように、向こうも私のことをじーーーっと見つめているのだろうか。
私はいつ「この人に飼われたい!」とか「この人に縛られたい!」と、思うのだろう。
ただひたすらに、飼われたいと願っていたけれども、その願望が現実にすり替わる瞬間、私はどう感じるのだろう?
主と出会ったのは、1月の土曜日の午後・・・(旧)
SMxSM ONLINElの2ショットチャットをうろついていたときのことだった。
主の待機メッセージを読んで、心惹かれるものがあった。以前にもそのメッセージは目にしたことがあり、お話しをしてみたいと思ったのだけれど、ちょっと目を離した隙にいなくなっていた主。また、出会えたのは幸運、と、あたしは慌てて「入室」をクリックした。
会話は、当たり障りのない部分から始まった。恐ろしいほど丁寧な口調であったのが忘れられない。
なんの話をしたのかなぁ・・・内容はあまり覚えていないなぁ・・・まぁ、その手のチャットにありがちな自己紹介、みたいなことを、話していたんだと思う。
(そういえば、容姿については一切尋ねられなかった。今がどうあれ、飼ったら変えればいいだけの話だから、質問に値する事柄ではないのだろう。が「細身希望」と待機メッセージに一言書いておいてくれれば!と何度思ったことか・・あ、それじゃ出会えなくなっちゃうか・・)
話しているうちに。主からメッセンジャーが利用できますか?と尋ねられた。
使ったことはあるけれど、どうも調子が悪いんです、と答えた。MSNがあわなかったのなら、yahooを試してみたらいかがですか?と即されて、その場でダウンロードした。
持っていなかったのでアカウントも取り、メッセンジャーに繋いだ。2ショットチャットの個室から、主専用となったメッセンジャーに会話の場が移ったのは出会ってから2時間ほどたってからのことだった。
主に一目惚れして、ダウンロード、インストール、アカウントの取得、とその行為を行ったわけではない。ものすごく単純に「もっと話してみたい」と感じただけなのだ。
あたしは主が尋ねられることに一つ一つ答えていただけだったけれど「なんでこんなこと、聞くの?」と、思ったことは一切尋ねられなかったし、まったく友達的な雑談というわけでもなかった。
ミスタイプもなく、タイプも速く、きちんとした日本語を使える、頭の良い人だという印象があった。
それから、メッセンジャーでチャットを続けたとき、個人情報の交換、みたいな場面にさしかかった。フリメのアドレスひとつでも「どうしようかな、教えちゃっても大丈夫なのかな?」と、迷ってしまう相手と話したこともある。
ちょっと耳を澄ませてみた。自分の頭の中に警報は鳴っていなかった。あたしはこの自分の感覚・・直感を、何よりも信じている。思えば、それが全てだ。
なので、その場で問われるがままに、携帯メールのアドレス、携帯の電話番号、自分の顔写真、を差し出し、交換した。今まで体験したことのないスピードで、コトが進んでいるのは、そのことからでも感じられた。
電話してもいいですか?と尋ねられ、はいと答えた。
すぐに電話がかかってきた。・・・何分くらい、話しただろう・・・10分か、15分、そこそこだったと思う。
気が付いたら、あたしは主に飼われていた。
拾われた、というのが正しい言い方なのだろうか。
イメージとしては段ボールの箱に入れられていた子犬(それとも、老犬?)が、気が付いたら主の家に連れてこられた、という感じだ。
関係が成り立つかどうか、それを構築するのにどれほどの時間が必要か、などという疑問も抱かせる暇がないほど、それは主の大きな力に引っ張られていきなり始まった。多分、あたしはこのくらいの力で引いてくれる主に出会いたいと、望んでいたのではないかと、今思う。
会ったこともない人を、知り合ってから数時間も経ってないモニタの向こう側の『名前』を「自分の主である」と、リアルな感覚で、あたしの一番奥の部分に認めさせる人が存在するなんて、思ってもみなかった。
「お前はもう、俺の飼い犬だね?」そう、電話で尋ねられたとき、背筋が震えた。「はい」と、答えた声も、震えていただろうか。
自分の人生が一変する予感がした。
事実、一変した。

(後日談なのだけれども・・主があたしを「飼い犬」と表現してくれたのは、この日のこの言葉で最後になった。次の日、主にあたしの体重を言ったら呼び名が「豚」に変わったからだ。ダイエットを命じられ目標体重に達したら「犬」と呼んであげると主は言った。あたしは頑張って犬の資格を得た。・・・が、そのときは何故だか「奴隷」になっていた。
ああ・・・・あたしは犬になりたかったなぁ・・・・。いや、一度でもいいから、あのとき犬と呼んで欲しかったなぁ・・・・)
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