そのバーはネットの検索で見つけたんだけれども、実際に近くまで行ってみると、それらしき看板もなにもない。黒服のおにーちゃん達がうろうろしている交差点で途方に暮れる。
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看板出してないバーも多いしなぁ・・・と思いながら「迷ったら電話をくださいね」とサイトに書いてあったので電話をしてみた。すると、口頭で詳しい場所を教えてくれて、それはサイトの説明とはちょっとズレた位置だったりして・・・そうか、なるほど・・・そういうシステムか。
その日、主様は腰を酷く痛めていた。居酒屋で、ただ座って飲んでるだけでも辛そうに見えた。その姿勢でそれほど痛いなら、多分寝てるだけでも痛いだろう・・・(><)。
そんな体調なのに、ホテルに行く前に、「行ったことのないハプバー」にちょっとだけ寄ってみるか・・・と考えるところが、とても主様らしいと感じた。
そのハプバーは、(エレベーターのない)マンションの一室にあった。
辿り着いたそのドアの前でアングラムードに圧倒される。どんな店なのか、そもそも本当に店なのかわからなくなってしまった。
ドア横に傘が10本くらい乱暴に立てかけてあったからだ。ここが傘置き場?・・・なわけじゃ、ないよね?
迷ったけど、他に置き場所もないので、あたしは持っていた傘をそこに立て置いた。
ドアホンを押す前の躊躇を無言で主様と共有する。主様がにやりと笑った。ドアホンのボタンが壊れ、プラスチックのカバーが外れていたからだった。主様はその剥き出しのボタン(の残骸部分)を、押した。
不安は的中・・・ドアが開かれ、中に入った途端、あたしは「すみませんでした!!」と平謝りして帰りたくなった。
異空間。
狭いマンションバーな上、謎の人達(客なんだけど)が、車座になってソファーに腰掛け談笑している。家族のような親しげなムードができあがっていた。
その中に溶け込まなくてはいけない(客同士コミュニケーションを取ることが必須)・・・それを、足を踏み入れた途端に感じて帰りたくなったのだ。
3つあったテーブルの上には、うまい棒やらミルクせんべいやら歌舞伎揚げやらの駄菓子が雑然と袋ごと置かれ、何故かカセットコンロ(鍋とかするとき使うやつね)が、いかにも「片付けるの忘れた」風に放置されている。いつから置いてあるのよ、そのカセットコンロ!
(その上、ステテコのオジサンが一番奥にでーんと座っているし・・・なに?なんなの?どう振る舞うのが正しいの?この中に混じるなんて、無理!こんな状況、まったく予想してませんでした!)
そもそも、あたし、ものすごい人見知りするんだけど・・・こういうのホント苦手なんだけど・・・気持ちが思いっきり引くというか。
(以前、その話を主様にしたら、素で吹き出されてしまった。お前のどこが、人見知りなんだ!と。い、いや、本当に・・・根はひきこもりなんです・・・ただ社会にもまれ生き残るために営業能力が向上しただけでして・・・というか、主様も全く同じタイプだと勝手に思っていたりしてたんですが^^;)
そうはいっても、ここまで来ちゃった以上、入るしかない。
主様のあとに隠れるようにくっついて、空いていた席(奥の、ステテコオジサンの真ん前><)に座った。
普通なら床に座るあたしだけれど、そんな「主様とあたしの世界」を持ち込んじゃいけないような気がして、こじんまりと椅子に座った。そのことについて主様からなにも言われなかったので、主様も同じ気持ちだったのかもしれない。
(どうやって、この場に馴染むよ?)・・・と。

そんな風に「場のガード力」が、異様に強力な店だったけれど、ツッコミ所も満載な店だった。
ハプバーなのに、身分証明書も求められず、即入店。
大阪のハプバーとの差が激しすぎる。
「主様、お金払いましたっけ?」
「いや、まだ、払ってないw」
・・・あのぅ・・・すでに注文したビールを飲んでたりするんですけど・・・。
「この店は、帰るときにお金を払うシステムなんですか?」つい、ステテコオジサンに聞いてしまった。
「いや、そうじゃないけどね」
・・・サッパリわからない。誰がこの店の主なんだろう。「店員」は混ざってるんだろうか?ドアを開けてくれた人が「主」だろうとは思うけど、それ以外の客がまた全員「主」ぽいムードをかもしだしてるというか・・・。
とはいえ・・・わからないなりにも、「もんのすごく営業が適当」だってことだけは、よくわかった(笑)。
細かいことなんて、誰一人として気にしてないような。
(気づくと、主様はママさんにお金を払っていたけれど←それで、ようやく「主」が誰かわかった・・・単独男性の料金がかなり安いお店だった。カップルは普通な感じで5000円だったけど・・・でも、もしかして「いつお金払うんですか」と聞かなかったら最後まで請求されなかったのかも?なんてことすら感じた。・・ないとは思うけど、もしかしたらそれがあり得そうな店、というのかな)
客は全部で5〜6人だっただろうか。そこに主様とあたしが加わり、それで狭いバーはいっぱいいっぱいに見える。広さと比較すると、大盛況な状態。
ギラギラした目をしてる客が一人もいない。エロいムードが全くない。縄の話題でとにかく盛り上がっているようだ。
馬油がどうの、匂いがどうの、ナニで染めると色がどうのって話が飛び交っている。
・・・縄部。
そうか、この店は、縄部の部室ね!?
(部費は払いたいときに、各自好きなだけ払うのかもしれない・笑)
主様は、空気を読みながら、少しずつ会話に加わっていった。他のハプバーの話や、吊りの話なんかを振って、あたしが途中で合いの手をいれるような感じ。
あたしを縛ることがこの場では一番の挨拶になるんだろうけれど(主様は縛りたそうな目をしていらっしゃったけど)、「今日は無理だな」と主様が小さく呟いていた。
と、そのときママさんがステージに上がり、さっきまでミルクせんべいに梅ジャムを挟んで食べていた女性が縄を手にした。
「部活」の始まりだった。
縛りを見るのは面白い。ショーではないけど、食い入るように見てしまう。
「飛脚で吊りたいんだけど、縄が足りない・・・」なんて、梅ジャムのおねーさんが、ステテコオジサンに指導を求めてる。
彼女は吊りができるくらい上手いし、ものすごく綺麗に縛れるのに、「もっと、もっと」と、向上心の固まりのような瞳で、縄に取り組んでいた。
さすが縄部。
プラモを組み立てて塗装してるときのような瞳、に感じたというのかな。

と、そのとき、ドアホンが鳴って、新たな客の到来を告げた。
「ママ、縛られてるし!」と、主様もあたしも笑った。
入り口近くにいた客が立ち上がって、ご新規さんを迎える。「初めてです」という単独男性が入ってきて、あっさりフロアに通される。うわぁ、すごい店だなぁ(しかも、その単独男性も、やはりギラついていなかった・・そしていつ、代金を支払ったんだろう・・・←実はすごい、気になってたりしてw)。
ママが縛られてる間、客は皆、自分勝手に冷蔵庫からビールを出したりお酒を作ったりしていた。
「氷が欲しい」と呟いたら、常連さんがカウンターの中に入って、あたしのグラスに氷を追加してくれた。
ふと気づくと客の一人(男性)が全裸になっていた。そういえば「露出が好き」という嗜好が聞こえていたような気がする・・・でも、ここでの「露出」って・・・なんとなくお風呂のあと全裸でうろつく感じと被ってたりするんだけれども・・・。「見て、見て!!(あるいは、いやん見ないで)」ってオーラが出てないというか・・・。
そういう細かいことが、いちいち面白く感じてしまった。みんなの「家」なんだなぁ、このバーは。
変態の隠れ家というか?
「もう行くか」「そろそろ出るか」「座っているのが辛い」主様は何度も撤収しようとしたけれど、興味深いモノに後ろ髪を引かれるような感じで、帰るタイミングが掴めないでいる様子に見えた。
「・・ちょっとだけ、縛ってもらいましょうか?」と話を振ると、主様が乗ってくださって・・・「悪いんだけど、10分コースでお願いできる?」と、梅ジャムねーさんに声をかけた。
10分なんて、簡易マッサージみたいだねw、なんてみんなが言いながら、10分コースで縛っていただいたのがこのシーンです。
(実際は20分はかかっていたような気がするけど・・・とても丁寧な縛りだし)

「服は脱いで、ネックレスも外して」と注意される。服は破くかもしれないから、ネックレスは壊れるかもしれないから、だそうです。
そうか、自分の玩具ならいいけど、他人を縛るときってそういう配慮をするものなんだ・・・。へぇ〜、へぇ〜、へぇ〜。
梅ジャムねーさんは10分コースの縛りでも、何度も手を止め、ステテコ先生と検討したりしてる。あたしが全くわからない、背中側の縄の処理について、あーだこーだ考えているように感じた。
「この部分って、どうするの?」
「こっちから、こう抜いて・・・」ステテコ先生が、チェックして直しを入れる。
「そっか・・・、忘れちゃうから、写真撮っておこう」なんて言って写真撮ってるし。
「検討してる場面が面白いから、撮っておこう」と主様も仰って撮影してるし。

「主様は適当ですよね♪」と言ったらはたかれてしまった。
いや、適当なのが悪いという意味じゃないんだけど・・・(どちらかといえば、あたしは適当で乱暴な方が好きだからかな)。
そんなわけで、ちょこっと縛っていただき、最後にお店の写真を撮らせていただいて、撤収。
ドレスを着たマネキン(?)を縛ってある部分を撮ってたら、客の一人が「ああ、それはこの店のシンボルみたいなものだから、撮っておくといいよね」なんて言ってる声が聞こえた。

常連さんもママさんも馴染み過ぎちゃってわからないのかもしれないけど、この店の特徴は、入り口の傘と(玄関を入った中にもやっぱり傘は10本くらい立てかけてあったw)、カセットコンロと駄菓子だと思うんだけど・・・^^;
(でも、その画像は撮らなかったのよね。いろいろな意味で、それを画像で説明しちゃうのはもったいない←?気がしてw)
主様は「今度はゆっくり遊びに来よう。落ち着ける店だな」と言いながら、かなりお気に召していらっしゃる様子でした。
(そのときは、甚平持って行きましょう、是非!主様は甚平がお似合いになると思います!・・あ、作務衣もいいかも)
エロとは別の刺激をたっぷりいただいた、濃すぎる空間でありました。
(本当は、「ステテコ先生」や「梅ジャムねーさん」ではなく、キチンとした通り名があるんですけど、この場で公表を避けるため伏せました。・・仮名、ということで^^;)